「明治伊万里」復刻プロジェクト 明治伊万里とはー明治伊万里復刻までの経緯

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「明治伊万里」復刻までの経緯

日本の誇りでもある伝統技術を後世に残すために─

book.jpg『幻の明治伊万里 [悲劇の精磁会社]』 「明治伊万里」を復刻することになったきっかけは、『幻の明治伊万里 [悲劇の精磁会社]』の著者である蒲地孝典さんとのお付き合いでした。蒲地さんは、商社の社長をされながら古美術商として輸出明治伊万里の数々を里帰りさせてきた人なのですが、その彼が「この精磁会社の復刻を、川原忠次郎さんの縁戚になるお前のところでやってみないか」と、松本に声をかけてくださったのです。
 5年前の有田の現状をあらためて見てみると、産地としての売り上げは、ピークだったバブルのころと比べたら4分の1ほどにも落ち込んでいて、窯もバタバタと廃業していました。これはつまり、産地に力がないということです。陶磁器の産地として続いていくだろうか、と不安に思いましたね。このままではどんどんフェードアウトしていって、この下りカーブでいったら、発祥400年を迎える2016年にはなくなってるんじゃないの?と、ブラックジョークを語るひとたちも有田の中でさえいたくらいです。このまま何もしなければ、幕末から明治にかけて、最高の技を持つ粋な職人集団が築き上げてきた「明治伊万里」の誇るべき伝統技術も、あっけなく消え失せてしまう、そんな恐怖感もありました。
 大陸からやってきた様々なものを日本という小さな島国が受け止め、ここで練り上げて、いつしか自分たちのものにしてしまう巧みさ。これによって生まれたのが、数々の日本ならではの美であり独自の文化です。「明治伊万里」もまさしくその代表だと思うんです。グローバル化の波を受けて、陶磁器の一大産地としての生き残りは難しいとしても、歴史ある有田という産地の名を掲げながら、日本の誇りでもあるこの伝統技術はきちんと残すべきだ──そう話合ったんです。こうして「明治伊万里」の復刻を手がけることになりました。

精緻を極めた絵付技術の再現に挑む。製土は有田焼の原点・泉山にこだわる。

about01.jpg絵付け 伊万里の復刻。精緻を極めた「精磁会社」を復刻するうえで最も重要なのが、絵付です。
絵付については、佐賀県立有田窯業大学校で講師をされていた伝統工芸師の先生に指導をお願いしました。絵付でさらにキャリアアップ、特殊な勉強したい人間はいないかと社内外に広く募集をかけて、集まった10名ほどの絵付師さんに毎週一回、先生から直接指導をしていただきました。そうして2年かかってやっと完成したのが、鹿鳴館の饗宴を彩ったといわれる「色絵竹文ディナーセット」です。
 絵付はまず、絵の具の溶き方から学びます。有田では絵の具を摺るというのですが、乳鉢に絵の具と膠を入れて時間をかけてすり潰していきます。絵の具に膠を同化させるわけですね。最初は絵の具の摺り方だけで、1時間半終わりますからね。絵の具って、摺るときの力加減一つで色味が変わるんですよ。昔は、絵付師として入っても、絵の具を摺ることだけに専任していた人がいたくらいですから、「あんた、赤ね」って言われたら、3年も4年もひたすら赤だけを作る。これが有田の職人への一歩ですよ。それくらい、絵付の技術は奥が深いんですよね。
ここで学んだある一人の女性は、絵付師5年目にして、有田で一番上手いかもしれないといわれるほどにまでなっています。まず、そういう人材がたくさん育つしかないな、と思い、今も、「明治伊万里絵付技術研究会」というのをつくって、絵付師さんに勉強して頂いています。本来なら、国や伝統技術保存会のようなところがやるべきことを、一企業がやっているわけですが、そういうことをやらない限り、新たな技術者というのは育たないですからね。
 図柄は、まずはもともとあったものをそのまま復刻することが第一段階。そして、すでにある図柄を応用して、リデザインするのが第二段階。さらに、体得した技術と自分のセンスを融合させて、まったく新しいものを作る──最終的には、この第三段階にまで持っていきたいと考えています。
そして、もうひとつ大事なのが、陶土。製土は、「有田泉山の陶土」にこだわりました。泉山の土でつくる──これが伊万里・有田焼の原点ですからね。
about02.jpg泉山磁石場 泉山の陶石は単味で陶土になるように、非常に優れてはいるのですが、ものすごく扱いづらいんです。化学的にいうと硫化鉄が多く、鉄粉のようなものが浮き出て、色が黒ずみやすいんですよ。柿右衛門の「濁手(にごしで)」や、生地の余白をむらなく塗りつぶす「濃(だみ)」といった技法が生まれたのも、この土の性質のせいではないでしょうか。
 この泉山の土が使われなくなって、かれこれ100年が経ちます。今では、有田焼も含め、肥前地区の焼き物のほとんどは、熊本の天草陶石を使って作られています。
 技術というものは、ずっと継続していくことによって、伝承・蓄積されていくものだと思うんですよ。100年使わなかった技術をもう一度掘り起こしてやろうとしたら、100年かかるのが普通です。それをわずか数年でやろうとしているんだから、えらいいろいろ無理がある。それを承知のうえで、今の先端技術をうまく取り入れながら、あれこれと模索しているわけです。
たとえば、25センチの洋皿を泉山の磁土でフラットに作るというのは、ものすごい難題です。泉山の陶土は耐火度が低いから、すぐにへたるんですよ。ようするにリムが落ちたり、高台の中が尻餅をついたりと。大きい洋皿でよくやるように、支柱を使って焼けば簡単なのですが、職人として、それはやりたくないというのがあるのです。コンピュータでデータがとれるわけでもなく、これくらい落ちるだろうなっていうのを計算してあらかじめ膨らませておいて、あとは焼き上がってみないとわからない。それでも、「なにがなんでも泉山の土で真っ直ぐに作るんだ」という意気込みで、最高峰のものを目指しているのです。

原点に忠実に、先人たちの技術を再現し、現代に甦らせる「明治伊万里」。

 このプロジェクトは当面、有田焼発祥400年となる2016(平成28)年まで、10年間の期間限定で活動しています。陶土屋さん、型屋さん、絵の具屋さんなどそれぞれの会社にもあれこれ無理をお願いしながら、ゆくりと進めています。その間に復刻製作する主な対象は、1882(明治15)年、「精磁会社」がみごとに完成させたわが国初の高級ディナーセットなど精磁会社設立に関与した名工たちの作品が出発点です。少しかっこよく言えば、「明治伊万里」の魂を具現した完成度の高い逸品を、時を超えて響きあうように現代の陶工たちが復刻します、ということでしょうか。この作品を一人でも多くの方に愉しんでもらいたいですね。

通販・販売店

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展示会情報

現在、展示会情報はございません。

ご来場ありがとうございました。
紀伊国屋NY本店特別展「麗しの明治伊万里」は終了しました。

●会期
 2010年
 10月23日(土)~11月7日(日)
  月曜日〜土曜日 10:00〜20:00
  日曜日 11:30〜19:30
●会場
 米国紀伊国屋書店NY本店 2階展示場 
●主催
 米国紀伊国屋書店
 有田製窯株式会社&明治伊万里復刻プロジェクト
●後援
 佐賀県有田町
●協賛
 宗政酒造株式会社 
 山下工芸株式会社
 エム・テック株式会社
●協力
 株式会社窯品計画
 朝重利文デザイン事務所
 辻調理師専門学校
●会場デザイン
 大寺康夫(JIN Woodscaps 建築家)
 ヒロ・オダイラ(Precious Pieces 和紙デザイナー)

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